芦別物語

親父の夢の旅は続く

親父が入院している。
今の病院は9月26日に入院だからもう2ヶ月だ。
その前にも別の病院で2ヶ月。

3ヶ月毎に転院しなければならないので、年末年始は忙しくなる。
病名が無い、病気ではなく老衰のみという珍しいパターン。多分親父の系統は体が丈夫なのだろう。

寝てばかりいる。やせ細った体。顔は別人のように変わった。
頭だけはぼけても元気だ。
入院したての頃は、虐げられた犬のように全ての人に噛み付いていた。
今ではすっかり居心地よくなりのどを鳴らしておねだりしている。
きっと人の中に居る事が温かく気持ちよいものだと今頃気付いたのだろう。
もうすぐ89歳になる。我が家の系統では最長記録だ。

一時は延命治療をするしないで家族間でも意見が分かれた。当然そうなる。
本人は尊厳死を望んでいたが、どこから尊厳死か延命治療かは素人には分かるはずも無く、手探り、試行錯誤が続いた。
結構タフでなければ精神的にはこれだけで看病するほうも参ってしまうのかもしれない。
私は仕事の能率が落ちる程度だった。


人には自分の死ぬ日、死に方を決める権利がある。
強い意志だけが未来を決める。
親父の未来も放っておくと崩れてしまう。
美しい冬の日に、美しく自然に終わらせて上げたかったが、これだけは強行できない。
中途半端な延命処置とあいなる。

本人はぼけていて最早同意が得られないので
家族側で中心静脈栄養(IVH)を選択したのだ。

今は親戚の叔父さんも別の病院のICUに入院中だ。
数少ない親戚の中で一番仲の良い叔父だ。

何とか持ち直して欲しい。
こちらは70代で親父よりもずっと若いのだから。

さらに疎遠な別の叔父が今月亡くなった。
来る時には一気に来る。

心配事だけでも忙しくてしょうがない。
仕事の方は止まる事を知らないかのように押し寄せてくる。
うれしい悲鳴だ。

自分に持ちこたえろ、と命令する。
自分の仕事では生死を賭けたような日々が続いた。
今ではすっかり安定しているけど、
実生活での厳しい試練は、周囲の生死の問題にもすっかり平気にさせてくれる。

流れよ、父の夢のような残りの日々よ。
父が望んだ美しい日が迎えられるように。

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