芦別物語

悲しい事はいつもある

6月は別々のホテルに4回泊まった。こんなこと初めてだ。
最初は芦別のスターライトホテル。
芦別のオフ会のあと、朝食のみのシングルルーム。
結局ここで評判の夕食は過去に一度も食べた事が無い。
狭い部屋、ぶつかりそうな3点セットUB。どこもそうなのだけど・・。
このホテルではいつも暑くて眠れない。何故か今回分かった。
羽毛布団が分厚すぎるのだ。夏冬兼用か?と思わせる分厚さ。
北海道ではどこもそうなのかと思っていたら、次のホテルで答えが出た。

翌日支笏湖の第一ホテルに泊まる。湖側のツインルーム一人で泊まる。
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入り口は駐車場の裏口かと思った。地味だけどしっかり作られた意匠。
人手が足りずサービスは行き届かないとネットに書いてあったからその辺は期待せずにゆったりと過ごす。
広い部屋、上質の布団は厚すぎず行き届いた心遣い。
東京の第一ホテルは何度かお世話になったけど同じ系列でしょうか?

支笏湖の湖畔だけど部屋からは樹に遮られて景色は見えない。
きっと建物全体を樹で覆うように配置する事が建築許可の条件になってるのだろう。
国立公園などでは良くあること。
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夕方一人で寒い空気の中湖畔に下りて行く。丁度夕陽が沈み始めたところ。
僅かな風に煽られて水面が音を立てている。石にぶつかりながらまた帰っていく。
中国人のカップルが騒ぎながら互いに写真を撮り合い、終わればさっさと宿に帰っていく。
こちとら寒くても帰らないのだ。この夕陽には何か意味があるはず。
じっと見つめながら遠く空と雲と水面が青に溶け合う様を見守る。
教えてよ、未だ生きている意味を、この先何をすればいい?
答えてよ、今まで歩いてきた意味を。何が残っている?
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夕陽は無情に沈み、答えは何一つ与えられないまま、青の色が一斉に変わったのを見届ける。
そう、日は沈むと残された形あるものは一つの波長に取り込まれ、その色合いを調和ある空気の中に漬け込む。

きっとこうなんだ。これからは。そんなあやふやな気持ちのまま宿に帰る。
お一人様ディナーコース。個室で戴く。フロントのお姉さんが今度は和服姿で給仕する。
冗談を言って笑わせる。くりくりした目が答えてくれる。
でも八王子で義母の看病を続ける奥様に申し訳なく何か楽しめない。

3回目は6月下旬、その前日に大きな茶色い菓子鉢のような陶器が割れる夢を見た。
奥様にきっとお母さんのことだよと伝える。
八王子のビジネスホテルに泊まり、義母の枕元に通う。

朝通勤で駅に向かう人たちと逆行して、奥様の実家に向かう。
坂道、迎え撃つ朝の光。何て遠いんだろう。
大汗をかいて到着。朝ごはんを食べて義母の顔を見てからまた駅に向かう。
その24時間後に奥様の泣き声を聞く。

4回目はまたしても八王子のビジネスホテル。前回とは別の小さなシングル。
シングルで困るのはゆったりと着替えるスペースが無い事だ。
黒い喪服をベッドに広げ黒いネクタイを締め黒く重い靴を履く。

2日連続で休みを取る。誰に言う訳でもないけどやりかけの仕事の相手に伝えておく。
ぎっしり詰まったスケジュールをさらに横に追いやり詰めて隙間を作り出す。
体が不満を上げている。持つんだろうか?最後まで。

最後の最後に何故か告別式の挨拶が回ってきた。

閉めの挨拶をして欲しいと血の繋がらぬ私に振ってくる。
よござんす。閉めましょう。
通常公式の場では聞いた事の無い、誰も信じないような言葉で閉めましょう。

迷いの無い魂はさっさと身体を離れてもの凄いスピードで上昇していく。
もたもたしてると、お別れが言えないよ。
奥様が電話口で泣いた直後に上野公園の両大師に飛んで行った。
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古代の蓮を植えた小さな池の前で竹の先に青いトンボがとまるのをぼんやり見てたら
義母の声が聞こえた。こっち。こっち。
思わず見上げた空、真っ青な空に浮かぶ白い雲。その真ん中に義母の底抜けに明るい笑顔があった。
手を振っていた。何てこと。暗さが微塵も無い。

皆の前でそれを伝えた。
きっと誰も信じないだろうし、おかしな奴と思われるだけだろうと思った。

お開きになりお骨を持って奥様の実家に戻る。
女性たちに取り囲まれる。
皆それぞれに死者にまつわる、今まで他所で語ることの出来なかった話を順番にしていった。
ああ、良かったんだ話しても。
家族以外に魂の事は話さないようにしていた。
若い頃、何時も見ているイメージやビジョンのことを話すと決まって阻害された。
頭がおかしいという目で見られた。

それでも話し続けた。夢を見たと言う形に置き換えて話した。
そうすれば人は信じやすくなる。

いつか死者ではなく生きている人のために魂の話が出来るようになろうと思っている。

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