芦別物語

一時の休息

とに角とりあえずは我々にとっては一つのエポックだった。
建築基準法は改正された。
そのとんでもない実態に向かって突っ込んでいった。
姿もディテールも見えていないのに、もう決ったことだからと
構造事務所を説得し、霧の中を設備を決めていった。
何処へ出せばいいのか、何処が鬼門か、天国への門か、
何もかも自分の勘と運命を共にする。

いこう、行こう見えない明日へ。
確認申請は出された。後戻りはない。
そして未だ日本で結論は誰も出していない。
行こういこう、あの山の向こうへ。
死ぬわけじゃなし。

過去14年間、独立してからいくつもの山を越えてきたけれど
これほど見えない山もない。
おかげで見えない敵との戦いで疲弊し、ストレスの塊になった。

提出したあとで、自分が壊れている事に気づいた。
誰もかも破壊したくなる。リミッターが外れた感じ。
子供の頃、ブリキのおもちゃのぜんまいを巻いていたら、やりすぎて
金具がはじけて一気に最後まで走り出したみたいな感覚。

壊れて震えている自分がいた。狭い狭い世界に閉じこもりすぎたんだね。

殆ど誰もこのきちがいじみた改正法について語らない。
それもそうさ。一番影響を受けて、真っ只中で戦っている人は
アナウンスなどしないものだから。
最戦線で夢中で敵と戦う戦士は、マイクを持っておしゃべりする暇も余裕もない。

サドンデス、それも一方的に我々が負けるように仕組まれた罠。
たった一つの間違いも許さない、見つかればそこでゲームオーバー。
どうやって切り抜けるのか。
まだまだ見えてこない。
兎にも角にも、火中に飛び込んだ。

ここは一旦退却しよう。精神に最初の力を取り戻させよう。
恐れと不安は目をつぶらせる。分からない事を不安と呼ぶのなら
一旦、白いキャンバスだけにしよう。
そこに一つ一つ分かった事を描いていけばいい。

これほど壊れた自分を見ることになるとは、驚き。
確認申請など、朝飯前、パターンをちょっと手直しするだけで
軽く通してきた。検査官に教える事はあっても教わる事など殆ど無かった。
それなのに、今自分が小さな子供になったように感じるよ。

あ~ゆっくりしたい。世間は夏休み。大人の夏休み。
少しでいい、ここを離れたい。

多くのこと、先月はこなした。
法人としての資金力も高めた。開業以来の目標だった。
来るべき近い未来に備えて。これもそれも狭い世界の出来事。
あまりにも小さな自分の世界に閉じこもり過ぎているね。

進む、進む。時には休もう。
こんな状態じゃ次の世代を呼ぶことさえ出来ない。
この建築界は誰か切り開く者が先頭に立っていなければ。
その小さな小さな一端を私も担おう。

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