芦別物語

ホームレスの杜

先日上野公園を散歩してみた。
平日の昼下がり。両大師から新装なって地下室が出来た科学博物館の前を通り・・、

ん、博物館前の大銀杏の丸い植え込みに大勢の男たち。
手配師を待つ労働者の群れ?いやいや元ホームレス?目に力が無い。
とに角公園のベンチの方までずらっと座ってる。
公園のカラスの大群よりも数が多い。

これは、もしやもしや、と思いホームレスの杜に向かった。
青いテントが並ぶ昼尚暗い森。のはずがあっけらか~んと明るく
光をはね返すステンレスの彫刻が並ぶ。
おお、いなくなった。一掃された。
この一帯は学芸大の生徒が通る通学路でもあったけれど、
長い事、ブルーテントに占拠された黒いゾーンだった。
それが無くなった。
まばらになった木々の間に清潔なベンチが置かれ、
目の前に重要文化財の日本奏楽堂のファサードが見えている。

そうだそうだ、この建物をじっくり見たのは何時の事だったか思い出せないくらい。
風がそよぎ、女子学生たちが笑顔とおしゃべりを撒き散らして通る。
光が柔らかい。雲も空も輝いている。
木々の梢の間から見える古い木のファサード。
エントランスの上はバルコニー風だけれど、人が立てるようにはなってない。
でも重要なモチーフだ。
白いぽこぽこした窓飾りが目に心地よい。

中も見学できるらしいが閉館真近だったのでやめる。

ついでに完全一掃を確認しに都美術館にも向かう。
重いレンガを貼り付けた横顔を見ながら正面へ迂回する。
スチールの2枚単位で縦に組んだ塀の柵が錆びている。
というよりは塗りにくくてメンテしていない、という感じ。

柔らかく盛り上げた植え込みの立ち上がりに時代と前川氏を感じつつ
左にかつての青いテント村を捜す。
ない。もうない。全部ない。
低いロープが張られて立ち入り禁止。
昼なお暗い、うっそうとした杜、初めて入ってみる。

地面は湿った新しい土が撒かれ、傷跡を隠す包帯のようだ。
歩ける。小道は綺麗に整備されて、普通の公園内の遊歩道みたいだ。
ちと暗いが。

おお、ついに戻ったのだろうか、かつての美しく深い上野公園の森が。
ほんと?今だけじゃないよね。

近くにいながら、散歩はいつも大噴水の手前でユーターン。
そこから先の学芸大方面へは迂回して進んでいた。
それが必要なくなった??

失われた時代が終焉を迎え、次の時代に入った一つの証だろうか?
繁栄の時代、でも自殺者はちっとも減ってない。
毎日のように電車に飛び込む人人。
上場企業だけが謳歌する今、我々中年のリストラの嵐は去ったのだろうか?
失われた時代に傷つき、未だ回復していない人々が周囲にはいる。

それでも、光を細かく反射する公園の広葉樹の葉の賑わいに
新しい力と輝きを感じる。
身も心も傷ついたけれど、いつか必ず光に抱かれる時が来る。
そう信じてもいいような気がする。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

画像添付