芦別物語

さよならトールボーイ

春は別れの季節、とは言うものの我々にとって建物の竣工=別れ、だ。
また訪問して住んでいる人と話す。なんて事はない。
分譲マンションだから。出来上がれば引渡し。即お別れだ。

1年5ヶ月、長いロードだった。
最近現場に通う事を「ロード」に例えたくなった。
一つの旅に出るような気分だ。そして突然終わる。

ファイル 96-1.jpg
エントランスの「ゲート」。ゲートも3つ目。
そもそもマンションにいきなり玄関、はいけない。と考える。
かつての屋敷は門がありアプローチがあり、玄関だった。
都会ではいきなり玄関が前面に突出する。

そこで精神的クッションと周囲との隔絶を宣言するために現代の「門」を
デザインする。それがゲート。
前回に使用したデザインは決して使わない。
それ故、頭をかきむしる事になる・・・。

ファイル 96-2.jpg
ファイル 96-3.jpg

正面のバルコニー手摺。アルミの既製品を加工した。
当初はステンレスの製作金物と曲面ガラスのセットだったが
経済は許してくれなかった。
アルミメーカーが出してきた製作図に愕然。
中高層用のやわな既成部品で取り付け、曲面には対応不可。スキマだらけ。
ここで負けるわけにはいかない。何度もスケッチとディスカッションを
重ねて、当初とは全く異なる限りなく製作金物に近いディテールに落ち着く。
スキマは全て5cm以内に収め美しく塞ぎ、がっちりステンレスアングルで固定。
ほんと一時は現場もアルミを諦めかけた・・。

ファイル 96-4.jpg
実はこの鉄骨階段ってやつ。開業以来ここ10年間で4つ目である。
毎回ディテールは変える。けれど今回ほど素っ気無いのは初めて。
極度に軽さを求められる構造ゆえに、思い切りシンプル。
極限までそぎ落としたふつ~の階段になってしもうた。
しかし、このシンプルさの中にも、鍛えぬいた耐久性は隠されている。
一般に鉄骨はさびに弱いとされる。

だが、当然の如くここは指定工場でしっかり溶融亜鉛メッキ。
計算上は30年はさびない、というシロモノ。
メッキのままで済ませるのが一般的だが、さらにオイルペイントしてる。
これで耐久性は35年か・・・。

ファイル 96-5.jpg
風除室の集合玄関機、これも思いっきりシンプル。
何も考えていないようにも見える?
しかし当初はコンクリートで型を作り、石を貼る予定だった。
そこで浮かび上がったのが狭いスペースに巨大な石張りのアンバランス。

後ろには片引きのオートドアがすっ飛んでくる。
スキマは10cm。当初はそのスキマを縮めようとした。
そして出した結論は間を広げる事。薄い玄関機を設置し30cm以上
スキマを広げてしまおう、という案。

で初の製作金物の集合玄関機ができた。シンプルに折り曲げ加工のみで
作った。切った、貼ったの複合型はごついし不経済じゃ。
で、出来上がったが、余りのシンプルさに誰も見てくれない。
う~む、これで良かったのか・・・。


さ・よ・な・ら・トールボーイ「クリスタル」
また何時の日か会おうね。
君は生まれたばかりだけど、もう立派に人の役に立てる。
ここで暮す人々の人生を見届けておくれ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

画像添付