芦別物語

さよならを重ねはじめて

友人が亡くなった。
中学時代の同級生だ。当時はくりくりした大きな目と人懐っこい笑顔。
なぜか良く陽だまりの犬同士のようにほこほこと話し合った。
それから長い月日が流れた。

独立して事務所を開いた時に、営業上銀行関係の友人を捜す必要ができた。
調べたら彼がいた。やあひさしぶり。でも心は乗り出した航海の手助けを求める気持ちで一杯。
仕事の話をしようとしたら、人懐っこい笑顔で返され、やめた。
それからは食いしん坊の彼に付き合って時々食べ歩く仲になった。

良く食べた。子供の頃のような小顔ではなくひたすら二人ともメタボに近づいていたけれど。
建築の話をした。彼は良く勉強し読んだ建築家の本のコピーをくれた。
でもね、全然違うんだよ。そんなに華やかな世界どころでなく
どろどろのビジネスオンリーだよ。
そう言って彼のきらきらした好奇心に満ちた目をそらすのが精一杯。

全然違う世界にいて、それでも二人ともナイーブで傷つき易い面を持っていた。
内側の世界を語り合った。ジャズと酒、寿司と中華。イタリアンと焼き鳥。
何でもあり。1つではだめ。組み合わせで成り立つ心の世界を持っていた。

それももう終わった。
白血病であっけなく逝ってしまった。
さよならを言いに行ったけれど、彼の近くに行く事が禁じられた。
押しつぶされたような気分で斎場を後にした。

その足で数人の同級生と焼き鳥を食べた。
語ろうとする言葉が、目が彼の方を見ろ、と聞こえる。
ゆっくりと人の話を聞き、大事な事は2度ずつ繰り返す癖。
ゆるやかだけれど繊細な流れを持った声。

これが自分の葬儀だったら、どんな目でみんなを追うだろう、と思い続けた。
皆の話を聞いて、彼が実は誰とでも打ち解けるタイプでなく、
むしろちょっと変わった男と見られていたことも知った。
そうだね、私と話が合うってことは、そうだよね。

結局彼とは仕事の話にはならなかったけれど、葬儀の翌日滞っていた重大な事案が再度動き出した
のを知った。
誰かが背中を押してくれたんだね。

さよなら。もう一緒に食べられないけれど、残された人と時代と一緒に生きていくよ。

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