芦別物語

あんまりだ

それはあんまりだ。

2人は子供の時からの親友同士。背丈も小学校の先生のお気に入りだったのも一緒。
家が近所でいつも一緒の女友達だった。

少し大人になり二人で撮った葉山マリーナでの写真。
長いドレスを風になびかせ、二人デッキで潮風に吹かれていた。
濃紺のドレスと少し赤い髪の女と、モスグリーンのドレスで漆黒の長い髪の女。
まるで女性誌のモデルみたいに写っていた。

二人は近所じゃ評判の美人だった。
正確はまるっきり逆で、太陽を真正面から受け止める気の強い女と
月の陰に隠れて、負の重力で男を引き付ける女。

時が経ち
少し赤い髪の太陽は私の奥さんになった。
16年前の春分の日に結婚した。
漆黒の髪の月は同じ年の秋分の日に結婚した。
引力で引き寄せた年若い男と。

あの頃珍しかった教会で式を挙げ、光と音楽の中で祝福を受けていた。
ハワイから来た子供達が歌い、小さな噴水の水さえ祝福するように輝いてた。

初めての新居に奥さんを抱き上げて入る、それも二人同じ。

太陽がマンションを買えば、遅れて月の彼女も買った。

何かにつけて太陽と月の二人は意識し合い、気の強い太陽の奥様が
おばあさんになっても二人で語り合いたい、と常々言っていた。

やがて月は病に冒された。
太陽の半分の体重まで落ちた。
毎月のように70km離れた月の家に会いに行った。
月が欠ける日が迫っていた。
私も奥さんも心騒ぎ始めていた。

そして今日、訃報が届いた。
彼女の携帯で。

そりゃ、あんまりだ。二人の誓いが果たせないじゃないか。
余りにも似ていて、そして正反対な二人。
互いに必要とし、互いに違う生き方を認めあっていたのにね。

また、さよなら、だ。

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